2019年6月30日日曜日

フランス産 ロゼワインの生産量について

Diplomaの勉強がひと段落し、少し落ち着いて物事を考えられるようなりました。

しばらくは試験勉強から少し離れて、個人的に面白いと思える情報について書いていきたいと思います。
(個人的にはお勉強よりも、考えることが大切なように思えます。)

では早速、今回はフランスのワイン全般とロゼワインの生産量について書きます。

【フランスワインについて】
世界のワインの生産・消費・輸出の規模を考える上で、最も影響力が大きい国の一つがフランスです。
2018年では生産量は世界2位消費量では2位輸出量では3位輸出金額では圧倒的な1位)となっています(*1)。
(輸入数量でも世界5位ですが金額では比較的少額です。個人的にはこれも重要かと思います。)

ここまでは比較的すぐに調べられます。

今回はワイン全体の中のロゼ(rosé )に焦点を当ててみます。

フランス国内の地区毎、呼称毎の生産量を調べる場合にはこちらが便利です(*2)。
地区毎のAOP、IGPの生産量やスタイル別(赤/白/ロゼ)の生産量を調べることができます。

まず事前知識として、ロゼに関してはプロバンス地方の影響力が非常に大きいと言われています。

実際に調べてみます。


【ロゼワインの生産量について】
フランスのロゼワインの生産量は、
●AOP:3,286,896 hl(フランス産AOPワインの約15%
●IGP:3,728,356 hl(フランス産IGPワインの約29%
●合計:7,015,252 hl(フランス産ワインの約20%
※今回は便宜上VSI/VCIとVSIGは全て除いて考えます。

結構ロゼの生産量も多いですね
そして規制が比較的緩いIGPの比率がより高くなっています。

【プロバンスのロゼワインについて】
仮にプロバンスのワインをProvence-Alpes-Côte d’Azur州で生産されたワインとするとその生産量は、
AOP:1,393,710 hl(フランス産AOPロゼの42%
IGP:700,415 hl(フランス産IGPロゼの19%)
合計:2,094,125 hl(フランス産ロゼの30%
(AOCレベルではプロバンス地方ののVar県が圧倒的に生産量が大きい。IGPではOccitaine州の中のHérault県での生産量が最大。)

そしてプロバンスに位置するAOCが AOC Côtes de Provence、AOC Coteaux d’Aix-en-Provence、Coteaux Varois en Provenceです。
(それぞれの対象地域内にさらに小さいAOCが含まれます。)

数字から考えれば、プロバンスは特にAOPロゼワインへの影響力が大きいことがわかります。




AOP
IGP
Region
Department
White (hl)
Red (hl)
Rose (hl)
Rose(%)
White (hl)
Red (hl)
Rose (hl)
Rose(%)
Provence
-Alpes
-Côte d'Azur
04 ALPES DE HAUTES-PROVENCE
1,472
3,138
6,705
59%
2,921
5,297
14,792
64%
05 HAUTES-ALPES
0
0
0
-
1,474
2,167
1,351
27%
06 ALPES-MARITIMES
407
378
178
19%
196
587
159
17%
13 BOUCHES-DU-RHONE
21,724
29,412
299,912
85%
18,350
48,383
216,591
76%
83 VAR
38,559
55,590
869,661
90%
20,073
37,545
188,589
77%
84 VAUCLUSE
87,689
966,732
217,255
17%
60,290
151,111
278,932
57%
Sub total
149,851
1,055,250
1,393,710
54%
103,303
245,089
700,415
67%

France Total
8,491,935
10,199,853
3,286,896
15%
3,615,974
5,318,412
3,728,356
29%


2018年の生産量。Datadouaneのデータを基に作成)



では続いて、プロバンスと並んでロゼワインの双璧として知られるオクシタン州についてです。
この地域には様々なAOPとIGPが存在しますが、規模で有名なのはIGP Pay d’Ocでしょうか。


【オクシタンのロゼワインについて】
仮にオクシタンのワインをOccitaine州で生産されたワインとするとその生産量は、
●AOP:633,381 hl(AOCロゼワインの約19%)
IGP:2,547,4426 hl(IGPロゼワインの約68%
●合計:3,180,807 hl(ロゼワインの約45%


AOPとIGPの合計数量で考えればプロバンスよりオクシタンの方が生産量は大きいです
ただしオクシタンの場合、大半はIGPワインとなります

逆にプロバンスはAOPの存在感が大きいと言えます。




AOP
IGP
Region
Department
White (hl)
Red (hl)
Rose (hl)
Rose(%)
White (hl)
Red (hl)
Rose (hl)
Rose(%)
Occitaine
09 ARIEGE
0
0
0
-
99
741
254
23%
11 AUDE
103,732
554,957
123,751
16%
580,588
1,577,968
316,115
13%
12 AVEYRON
385
9,274
1,984
17%
342
964
148
10%
30 GARD
60,880
638,187
168,192
19%
377,762
893,082
832,780
40%
31 HAUTE-GARONNE
0
19,804
13,586
41%
537
10,947
19,592
63%
32 GERS
20,151
57,432
15,565
17%
902,364
66,166
106,562
10%
34 HERAULT
150,283
324,034
146,330
24%
1,009,248
1,746,348
1,092,079
28%
46 LOT
0
159,701
1,622
1%
4,922
68,191
19,654
21%
48 LOZERE
0
0
0
-
73
128
36
15%
65 HAUTES-PYRENEES
1,398
7,061
202
2%
549
401
288
23%
66 PYRENEES-ORIENTALES
89,375
205,710
126,330
30%
79,357
113,684
85,512
31%
81 TARN
34,744
82,241
22,911
16%
55,323
122,989
54,071
23%
82 TARN-ET-GARONNE
0
21,010
12,908
38%
2,071
21,090
20,335
47%
Total Occitaine
460,948
2,079,411
633,381
20%
3,013,233
4,622,700
2,547,426
25%

France Total
8,491,935
10,199,853
3,286,896
15%
3,615,974
5,318,412
3,728,356
29%


2018年の生産量。Datadouaneのデータを基に作成)



結局何が言いたいかといいますと。

【結論】
ロゼはフランスワインの生産量の20%を占めている。なかなかの比率ではないでしょうか?
  AOPよりもIGPにおいて比率が高い
プロバンスはAOPロゼワインを多く生産している。AOPではフランス全体の42%を占めている。
オクシタンはIGPロゼワインを多く生産している。IGPではフランス全体の68%を占めている。
●AOPではMaine-et-Loire県やGironde県、それにIGPではHaute-Corse県の生産量も比較的高い。


なので、フランスのロゼワインについて考える場合、プロバンスとオクシタンを網羅しておくと良い(今更ですが)。
AOPではAngers地区が含まれるMaine-et-Loire県のロゼも重要。ここはAOPロゼで考えると全体の15%を占めており、1県だけでオクシタン州に次ぐ量のロゼを生産している。そしてIGPロゼの比率がかなり低く、大多数はAOPとなる。

(1)
Status of the Vitiviniculture World Market -State of the Sector in 2018-, OIV, [online] Available at http://www.oiv.int/
(Accessed on 29/6/2019)


(2)
Production de vins. Datadouane. [online] Available at http://www.douane.gouv.fr/
(Accessed on 29/6/2019)


【参考リンク】
Vins de Provence. [online] Available at https://www.vinsdeprovence.com/
(Accessed on 30/6/2019)
コメント:ロゼを学ぶにあたっては外してはいけないAOCについてです。

Pays d’Oc IGP. [online] Avaialble at https://www.paysdoc-wines.com/
(Accessed on 30/6/2019)
コメント:今後が期待されるPays d’Ocについての公式な情報サイトです。

Kermode, D.(2019). How Provence is tackling the future challenges of rosé. The Buyer. [online] Avaialble at http://www.the-buyer.net/
(Accessed on 30/6/2019)
コメント:ロゼに関する今議論されていることについてです。

(Accessed on 30/6/2019)
コメント:フランス語が読める方は是非研究成果に関するプレゼンテーションを読んで頂きたい。

Gabay, E.(2019). Elizabeth Gabay MW puts 97 Pays d’Oc rosés to a special taste-test. [online] Avaialble at http://www.the-buyer.net/
(Accessed on 30/6/2019)
コメント:ロゼ専門とするMWの記事です。品種ごとの個性がロゼの味わいに与える影響についても言及しています。

Kavanagh, D.(2017). The World’s Most Wanted Rosés. Wine-Searcher. [online] Available at https://www.wine-searcher.com/
(Accessed on 30/6/2019)
コメント:高価なロゼについてランキング形式で紹介されています。