しばらくは試験勉強から少し離れて、個人的に面白いと思える情報について書いていきたいと思います。
(個人的にはお勉強よりも、考えることが大切なように思えます。)
では早速、今回はフランスのワイン全般とロゼワインの生産量について書きます。
【フランスワインについて】
世界のワインの生産・消費・輸出の規模を考える上で、最も影響力が大きい国の一つがフランスです。
2018年では生産量は世界2位、消費量では2位、輸出量では3位(輸出金額では圧倒的な1位)となっています(*1)。
(輸入数量でも世界5位ですが金額では比較的少額です。個人的にはこれも重要かと思います。)
ここまでは比較的すぐに調べられます。
今回はワイン全体の中のロゼ(rosé )に焦点を当ててみます。
フランス国内の地区毎、呼称毎の生産量を調べる場合にはこちらが便利です(*2)。
地区毎のAOP、IGPの生産量やスタイル別(赤/白/ロゼ)の生産量を調べることができます。
まず事前知識として、ロゼに関してはプロバンス地方の影響力が非常に大きいと言われています。
実際に調べてみます。
【ロゼワインの生産量について】
フランスのロゼワインの生産量は、
●AOP:3,286,896 hl(フランス産AOPワインの約15%)
●IGP:3,728,356 hl(フランス産IGPワインの約29%)
●合計:7,015,252 hl(フランス産ワインの約20%)
※今回は便宜上VSI/VCIとVSIGは全て除いて考えます。
結構ロゼの生産量も多いですね。
そして規制が比較的緩いIGPの比率がより高くなっています。
【プロバンスのロゼワインについて】
仮にプロバンスのワインをProvence-Alpes-Côte d’Azur州で生産されたワインとするとその生産量は、
●AOP:1,393,710 hl(フランス産AOPロゼの約42%)
●IGP:700,415 hl(フランス産IGPロゼの約19%)
●合計:2,094,125 hl(フランス産ロゼの約30%)
(AOCレベルではプロバンス地方ののVar県が圧倒的に生産量が大きい。IGPではOccitaine州の中のHérault県での生産量が最大。)
そしてプロバンスに位置するAOCが AOC Côtes de Provence、AOC Coteaux d’Aix-en-Provence、Coteaux Varois en Provenceです。
(それぞれの対象地域内にさらに小さいAOCが含まれます。)
数字から考えれば、プロバンスは特にAOPロゼワインへの影響力が大きいことがわかります。
AOP
|
IGP
|
||||||||
Region
|
Department
|
White (hl)
|
Red (hl)
|
Rose (hl)
|
Rose(%)
|
White (hl)
|
Red (hl)
|
Rose (hl)
|
Rose(%)
|
Provence
-Alpes
-Côte d'Azur
|
04 ALPES DE HAUTES-PROVENCE
|
1,472
|
3,138
|
6,705
|
59%
|
2,921
|
5,297
|
14,792
|
64%
|
05 HAUTES-ALPES
|
0
|
0
|
0
|
-
|
1,474
|
2,167
|
1,351
|
27%
|
|
06 ALPES-MARITIMES
|
407
|
378
|
178
|
19%
|
196
|
587
|
159
|
17%
|
|
13 BOUCHES-DU-RHONE
|
21,724
|
29,412
|
299,912
|
85%
|
18,350
|
48,383
|
216,591
|
76%
|
|
83 VAR
|
38,559
|
55,590
|
869,661
|
90%
|
20,073
|
37,545
|
188,589
|
77%
|
|
84 VAUCLUSE
|
87,689
|
966,732
|
217,255
|
17%
|
60,290
|
151,111
|
278,932
|
57%
|
|
Sub total
|
149,851
|
1,055,250
|
1,393,710
|
54%
|
103,303
|
245,089
|
700,415
|
67%
|
|
France Total
|
8,491,935
|
10,199,853
|
3,286,896
|
15%
|
3,615,974
|
5,318,412
|
3,728,356
|
29%
|
|
(2018年の生産量。Datadouaneのデータを基に作成)
|
では続いて、プロバンスと並んでロゼワインの双璧として知られるオクシタン州についてです。
この地域には様々なAOPとIGPが存在しますが、規模で有名なのはIGP Pay d’Ocでしょうか。
【オクシタンのロゼワインについて】
仮にオクシタンのワインをOccitaine州で生産されたワインとするとその生産量は、
●AOP:633,381 hl(AOCロゼワインの約19%)
●IGP:2,547,4426 hl(IGPロゼワインの約68%)
●合計:3,180,807 hl(ロゼワインの約45%)
AOPとIGPの合計数量で考えればプロバンスよりオクシタンの方が生産量は大きいです。
ただしオクシタンの場合、大半はIGPワインとなります。
逆にプロバンスはAOPの存在感が大きいと言えます。
AOP
|
IGP
|
||||||||
Region
|
Department
|
White (hl)
|
Red (hl)
|
Rose (hl)
|
Rose(%)
|
White (hl)
|
Red (hl)
|
Rose (hl)
|
Rose(%)
|
Occitaine
|
09 ARIEGE
|
0
|
0
|
0
|
-
|
99
|
741
|
254
|
23%
|
11 AUDE
|
103,732
|
554,957
|
123,751
|
16%
|
580,588
|
1,577,968
|
316,115
|
13%
|
|
12 AVEYRON
|
385
|
9,274
|
1,984
|
17%
|
342
|
964
|
148
|
10%
|
|
30 GARD
|
60,880
|
638,187
|
168,192
|
19%
|
377,762
|
893,082
|
832,780
|
40%
|
|
31 HAUTE-GARONNE
|
0
|
19,804
|
13,586
|
41%
|
537
|
10,947
|
19,592
|
63%
|
|
32 GERS
|
20,151
|
57,432
|
15,565
|
17%
|
902,364
|
66,166
|
106,562
|
10%
|
|
34 HERAULT
|
150,283
|
324,034
|
146,330
|
24%
|
1,009,248
|
1,746,348
|
1,092,079
|
28%
|
|
46 LOT
|
0
|
159,701
|
1,622
|
1%
|
4,922
|
68,191
|
19,654
|
21%
|
|
48 LOZERE
|
0
|
0
|
0
|
-
|
73
|
128
|
36
|
15%
|
|
65 HAUTES-PYRENEES
|
1,398
|
7,061
|
202
|
2%
|
549
|
401
|
288
|
23%
|
|
66 PYRENEES-ORIENTALES
|
89,375
|
205,710
|
126,330
|
30%
|
79,357
|
113,684
|
85,512
|
31%
|
|
81 TARN
|
34,744
|
82,241
|
22,911
|
16%
|
55,323
|
122,989
|
54,071
|
23%
|
|
82 TARN-ET-GARONNE
|
0
|
21,010
|
12,908
|
38%
|
2,071
|
21,090
|
20,335
|
47%
|
|
Total Occitaine
|
460,948
|
2,079,411
|
633,381
|
20%
|
3,013,233
|
4,622,700
|
2,547,426
|
25%
|
|
France Total
|
8,491,935
|
10,199,853
|
3,286,896
|
15%
|
3,615,974
|
5,318,412
|
3,728,356
|
29%
|
|
(2018年の生産量。Datadouaneのデータを基に作成)
|
結局何が言いたいかといいますと。
【結論】
●ロゼはフランスワインの生産量の20%を占めている。なかなかの比率ではないでしょうか?
AOPよりもIGPにおいて比率が高い 。
●プロバンスはAOPロゼワインを多く生産している。AOPではフランス全体の42%を占めている。
●オクシタンはIGPロゼワインを多く生産している。IGPではフランス全体の68%を占めている。
●AOPではMaine-et-Loire県やGironde県、それにIGPではHaute-Corse県の生産量も比較的高い。
なので、フランスのロゼワインについて考える場合、プロバンスとオクシタンを網羅しておくと良い(今更ですが)。
AOPではAngers地区が含まれるMaine-et-Loire県のロゼも重要。ここはAOPロゼで考えると全体の15%を占めており、1県だけでオクシタン州に次ぐ量のロゼを生産している。そしてIGPロゼの比率がかなり低く、大多数はAOPとなる。
(1)
Status of the Vitiviniculture World Market -State of the Sector in 2018-, OIV, [online] Available at http://www.oiv.int/
(Accessed on 29/6/2019)
(2)
Production de vins. Datadouane. [online] Available at http://www.douane.gouv.fr/
(Accessed on 29/6/2019)
【参考リンク】
Vins de Provence. [online] Available at https://www.vinsdeprovence.com/
(Accessed on 30/6/2019)
コメント:ロゼを学ぶにあたっては外してはいけないAOCについてです。
Pays d’Oc IGP. [online] Avaialble at https://www.paysdoc-wines.com/
(Accessed on 30/6/2019)
コメント:今後が期待されるPays d’Ocについての公式な情報サイトです。
Kermode, D.(2019). How Provence is tackling the future challenges of rosé. The Buyer. [online] Avaialble at http://www.the-buyer.net/
(Accessed on 30/6/2019)
コメント:ロゼに関する今議論されていることについてです。
Rencontres Internationales du Rosé. [online] Available at https://www.rencontres-internationales-rose.com/
(Accessed on 30/6/2019)
コメント:フランス語が読める方は是非研究成果に関するプレゼンテーションを読んで頂きたい。
(Accessed on 30/6/2019)
コメント:ロゼ専門とするMWの記事です。品種ごとの個性がロゼの味わいに与える影響についても言及しています。
Kavanagh, D.(2017). The World’s Most Wanted Rosés. Wine-Searcher. [online] Available at https://www.wine-searcher.com/
(Accessed on 30/6/2019)
コメント:高価なロゼについてランキング形式で紹介されています。
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