早速、書いていきます。
【栽培関連】
品種の特徴として樹勢が強く適切に管理されなければ収量が多くなりがちです。この品種で有名な産地は共通して収穫量を低く傾向があります。適度に収量が制限された場合には色が濃くタンニンも多い複雑さに富むワインを産むとされます。熟成するためには温暖な気候が必要であるため有名産地は温暖な地域に位置することが多いです。グルナッシュに限ったことではないのですが樹齢が古い木から収穫されるブドウからは高品質なワインができるとされます。Jancisによるとこの品種からできるワインに共通する要素は甘やかな完熟した果実味だとのことです。渇水には比較的強く、また適度に水が限られた気候で良い結果を出す品種であるようです。この点については以下で更に書きます。Bush vineと呼ばれる株仕立てに特別な適性がある品種のように思われます。
※Grenacheとは別の品種であるAlicante Bouchetについては参照2に要点がまとめられています。
この品種から高級ワインが作られる最も有名な産地は南ローヌのChaâteauneuf du Papeとスペイン北東部のPrioratです。前者については年間の降水量が680mm程度で、そのほとんどが冬に降るとされるため少なくともブドウの成長期の間は乾燥した地域と言えます。また日照量も多い土地です。また畑に散りばめられたGaletと呼ばれる小石は日中に熱を蓄え、それを気温が下がる夜間に放出することでブドウの熟成を促進すると言われています。後者でもこれは同じで降水量はここでも少なく、光を反射するマイカと呼ばれる鉱石を含むとされるスレート土壌のお陰でブドウの熟成が進むとされます。ただしこの二者間ではブレンドの相手方の品種が異なります。PrioratではCariñena
主要なブレンド品種です。共通して言えることはグルナッシュが適切に熟すためには温暖な気候が必要だということです。新世界のなかではオーストラリアでもこの品種は成功していると言えます。オーストラリアでは広大な国土の中に様々な気象条件のブドウ生産地域が存在しますが、高品質のグルナッシュを産出するのはここでも温暖な地域です。Barossa ValleyやMclaren Valeが最も有名です。それぞれ成育期間中に降る降水量は160mmと180-200mmでありかなり限られています。Barossa Valleyは世界で最も樹齢が古いとされるグルナッシュが未だにワインの製造のために現役で使用されていることで有名です。
【醸造関連】
グルナッシュはGSMと呼ばれるブレンドの主役と言っても良い品種です。GSMはグルナッシュ(Grenache)、シラー(Syrah)、ムールヴェードル(Mourvedre)のことです。これらの個性や熟し方が異なる品種をブレンドすることによってワインに複雑性を持たせることがこのブレンドの狙いであるように思われる。このブレンドの起源となっているのが南ローヌのAOC Châteauneuf-du-Papeです。その中でもひときわ名前が知られている生産者としてChâteau de Beaucastelがあります。このワイナリーは世界のワイン造りに重要な影響を与えたと考えて問題ないかと思いますので、少しだけ突っ込んで書きます。ここでは上記の3種類に加え、AOCで使用が認められている合計13品種をブレンドに使用します。スペインでは上記の通りCariñenaとブレンドされるため、このワインはGSMとはスタイルがやや異なるワインとなります。オーストラリアでは、個人的には割と珍しい様に思えるのですが、この品種を使って単一品種のワインを作るケースも増えています。
除梗についての話になりますが、現行のChâteau de Beaucastelは100%の梗を取り除いた状態で発酵させてワインを作ります(2015年はシラーの梗を残した模様です)。一方でオーストラリアにおいては除梗を行わず、そのまま発酵後まで果汁と接触させるケースがあります。梗を果汁と接触させることにより梗に含まれるタンニン等の成分がワインに溶け出すとされ、結果的にワインの骨格が改善されて味わいの複雑性も増すと言われる場合もあります。オーストラリアの狙いもこのタンニンからくる骨格の強化と、さらには抽出される香り成分の増強です。一方で全ぼう発酵の場合にはワインの中にある酸量が減り、またpHが上がる傾向にあることも指摘されます。要するにこの点でもかなりワインの性格が異なってくることが考えられるわけです。このへんのところは実際にBeaucastelのワインを飲み比べて見なければわからない話なのですが。。。
【参照】
1.
Grenache. Jancisrobioson.com. [online] Available at https://www.jancisrobinson.com
Accessed on 9 July 2018.
2.
Grenacha Tintorera(es) / Alicante Bouchet. Vine to Wine Circle. [online] Available at http://www.vinetowinecircle.com
Accessed on 9 July 2018.
3.
Red Grenache. Rhone-wine.com. [online] Available at http://www.rhone-wines.com
Accessed on 9 July 2018.
4.
Terroir at Beaucastel. Chateau de Beaucastel. [online] Available at http://www.beaucastel.com
Accessed on 10 July 2018.
5.
All about Chateauneuf du Pape Guide Best Wine Character Style History. The Wine Cellar Insider. [online] Available at https://www.thewinecellarinsider.com
Accessed on 10 July 2018.
6.
Priorat. Decanter. [online] Available at https://www.decanter.com
Accessed on 10 July 2018.
7.
Hudin, M.(2018). Priorat profile. Decanter. [online] Available at https://www.decanter.com
Accessed on 10 July 2018.
8.
Grenache Rebirth of an Australian Classic. Wine Australia. [online] Available at https://www.wineaustralia.com
Accessed on 10 July 2018.
9.
Barossa Valley. Wine Australia. [online] Available at https://www.wineaustralia.com
Accessed on 10 July 2018.
10.
McLaren Vale. Wine Australia. [online] Available at https://www.wineaustralia.com
Accessed on 10 July 2018.
11.
Robinson, J.(2015). Destemming. In Oxford Companion to Wine, forth edition. Oxford : Oxford University Press.
12.
Theron, C.(2015). Whole bunch fermentation for red wines. Wine Land. [online] Available at http://www.wineland.co.za
Accessed on 10 July 2018.
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