今回はその中のオーストラリアについて書きます。
【前置き】
オーストラリアは2016年時点での生産量を基準に考えた場合5番目のワイン生産国である。輸出金額では世界で5番目であるため、ワイン輸入国に対する影響も大きい。情報源は参照のOIVです。
干ばつは慢性化しており、特に有名な”The Millennium Drought”と呼ばれる1996年から2010年中頃まで続いたものが最も深刻。この時期の前にはぶどう栽培よりさらに水が必要である米の栽培も多かった。しかし水のコストの上昇に伴いぶどう栽培に移行してきた背景がある。
【The Millennium Drought】
1996年から2010年中頃まで続く干ばつだが、その中でもピークは2001年から2009年に渡って続いた。
影響があった範囲は人口が大きい南西部、南東部、Murray-Darling Basinである。ほぼ全ての農業地域に影響を与えたと考えて良いかと思う。
【ワイン生産に対する影響】
参照2の地域ごとの降雨量を表した画像によると、主要なワイン生産地域の多くで降水量が少なかったことがわかる。
また、Murray側の上流で雨が少ない場合、South Australiaの海側のような下流地域にも影響が出たもの思われる。
生産量が大きいNew South Wales州のRiverinaやCanberraDistrict、Victoria州の全体が真っ赤に染まっており、降雨が少なかったことがわかる。オーストラリアの産地の中には灌漑がなければブドウですら育たない地域が多く、そのような場所では灌漑に使われる水価格の上昇によるコスト高と供給不足のために栽培の継続が困難になる栽培農家が増えた。統計の数字で見てみると、特に2006-2007年の期間はブドウの生産量が激減。ワイン生産量は微増したものの、在庫されていたワインの数量は大きく減ったことがわかる。
参照8によると2007年のブドウ生産量は139万トン。これに対して直近のヴィンテージである2017年は198万トンです。現在の生産量から比べれば2007年がかなりブドウ生産量が少ない年だった。
※Wine AustraliaとBureau of Statisticsの数字が合わない。Wine Australianの2007年のワイン生産量とワイン販売量のグラフが逆になっているのではないかと思う。
Bureau of Statisticsによると、2007年の時点ではブドウ畑の面積は163,951ha。畑の総数は8,041で、そのうち83.7%が灌漑が導入された畑である。面積でみれば157,401haである。つまり、灌漑はほとんどの畑の生産に影響を与える重要な要素で、これを妨げる渇水は大変な問題である。灌漑の方法としては78,5%がDrip irrigation ともしくは Micro irrigation である。
【干ばつ後の変化】
干ばつの影響を避けるために講じられた措置としては主に以下の通り。
・灌漑効率の向上
・畑の土の保湿力向上を狙った土壌管理
・代替品種の使用、または代替の台木品種の使用
・キャノピーマネジメントの最適化
・冷涼産地での畑の開拓、もしくは冷涼産地で生産されたブドウの使用
代替品種と台木の使用について解説為る。Wine Australianのレポートによると、樹勢が強くなる台木と樹勢が弱くなる台木を使用した場合、実際のブドウの木の樹勢には大きな差ができるもののブドウの生産量という意味では比較的影響が少ないのだという。具体的には両方の系統の台木を使用し、シラーズを接木し育ても樹勢、葉の繁り方、呼吸の量に関しては最小と最大のものを比較した場合に3から4倍の差ができた。しかし、その場合でもブドウの生産量で比較為ると最小と最大のものを比較しても1.7倍程度の差しかできなかったのである。そのため、樹勢が低い台木を使った方が呼吸による水の蒸散量を減らしつつ、より効率的にブドウを栽培できると考えられる。接木する品種の変更には消費者の好みを考慮した慎重な判断が必要になるのと比べ、台木の変更は通常の木の植え替えの際に行える。大きな味覚的要素の変化を避けつつ水の使用効率をあげることができるというのが台木の変更のメリットである。
【参照】
1
2017 World Vitiviniculture Sitouation OIV Statistical Report on World Vitiviniculture. OIV. [online] Available at http://www.oiv.int
Accessed on 5 July 2018.
2
Recent rainfall, drought and southern Australia’s long-term rainfall decline. Australian Government Bureau of Meteorology. [online] Available at http://www.bom.gov.au
Accessed on 5 July 2018.
3
Vesch. M.(2008). Wine, Rice and Drought in Australia. The Wine Economist. [online] Available at https://wineeconomist.com.
Accessed on 5 July 2018.
4
Wine Scorecard 2016-2017. Govoernment of South Australia. [online] Available at http://www.pir.sa.gov.au
Accessed on 5 July 2018.
5
Riverina Geographical Indication. Wine Australia. [online] Available at https://www.wineaustralia.com
Accesse on 5 July 2018.
Australian Wine: Production, sales and inventory 2016-17. Wine Australia. [online] Available at https://www.wineaustralia.com/
Accessed on 5 July 2018.
7
Environmental and climate. Wine Australia. [online] Available at https://www.wineaustralia.com
Accessed on 5 July 2018.
8
Australian Wine and Grape Industry 2007. Australian Bureau of Statistics. [online] Available at http://www.abs.gov.au
Accessed on 6 July 2018.
9
Achieving water use efficiency and improved drought tolerance with rootstocks [online] Available at https://www.wineaustralia.com
Accessed on 6 July 2018.
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