ブルゴーニュ地域の中でも特に赤ワインの産地として名高い地域がCôte d’Orの北に位置するCôte de Nuitsと呼ばれる一帯です。
今回はそのCôte de Nuitsについてです。
前回の際にブルゴーニュと呼ばれる地域は南北の距離が230kmほどあり、6つの生産地域が縦に細長く散在していることを確認しました。その細長い地域中でもなだらかな東向き斜面で栽培されたブドウから最高品質のブドウを産出する事で知られるのがCôte d’Orと呼ばれる部分です。参照1はブルゴーニュの全体の地図です。このCôte d’Orの北の端にあるのがCôte de Nuitsと呼ばれる地域です。栽培面積は比較的小さく、南北の全長は20km程度です。北はDijonの街の南から南はCorgoloin村の南側までの渡る細長く伸びた形の生産地域となります。ブドウ畑は西側に位置するなだらかな東向き斜面の周辺に位置しています。Côte d’Or一帯にも言える事ですが、東側は土地が低く西側に行くほど土地が高く盛り上がってる行きます。ブドウはこの比較的土地が低い東側の地帯から西の斜面を登りきった先までの広い範囲に植えられています。最高品質のワインを生むとされるのはこの中の中心部である盛り上がった丘の中腹の部分です。Côte de Nuitsの西側にはさらに土地が隆起しており、標高が300-400mになる部分があります。Hautes Côte de Nuitsはこの丘の上にある平地に位置しています。
ここでなぜ東向き斜面の丘の中腹部分に有名な畑が多いのか確認します。参照3のEdge of the plateau slopeの部分にブルゴーニュの地層とブドウ畑がの位置に関する図があります。まず低地では表面の地層は茶色っぽくなり石灰質というよりは粘土質が多い事がうかがえます。その対極にあるのが丘の上の平地の部分ですが、ここでは表層の土の層が浅い事がわかります。ここから丘の下にいくにつれて上から侵食によって削られた土が堆積するため表面の土の層が深くなります。表層は下へ行けば下に行くほど深くなります。また丘の中腹では石灰質の土が深く蓄積しているため、こればブドウ作りに最適な要因かと思われます。一般的に石灰質土壌は水はけが良い一方で、適度な水分を保持できる点で優れているとされます。つまるところ土の性質と層深さがブドウ作りに最適とされているわけです。この丘なりの地形は他にも利点があります。参照1によると主なものは 1. 凍結に対する耐性 2. 西から吹く風からの保護 3. 日差しの影響の増幅 4. 過剰な湿度を抑制することにつながる水はけの良さです。これらの利点を享受できるのはCôte de Beauneにおいても共通する事です。基本的にCote d’Or地帯の西側にある低地ではBourgogne RougeやBougogne Blanc用のブドウが作られ、丘の上に行くにつれてヴィラージュ、プルミエ・クリュの畑が植えられています。中腹にはグラン・クリュが位置しておりさらに上に行くともう格下の畑が植わっています。
Côte de Nuitsにおいては特に最高級の赤ワインを生み出す事で有名はグラン・クリュやプルミエ・クリュが多く存在します。これらの畑からできるワインは数量が限られていると同時にブルゴーニュ地方のワインの中でも最高品質のものとされ非常に高価な価格で市場に出回ります。少し格が下がると特定の村でとれたブドウを原料にして作られた村名を冠したワインがあります。畑と同様に村によっても個性があり、同じ村名ワインのカテゴリーの中でも作られた村によって個性が違うとされています。Jancisによると主要なものはGevrey-Chambertin、Morey-St-Denis、Chambolle-Musigny、Vougeot、Vosne-Romanée、Flagey-Échézeaux、Nuits-St-Georgesとのことです。Côte de Nuitsの栽培面積はブルゴーニュ地域全体の約6%となります。赤ワインの名声に隠れてあまり目立たないですが、栽培面積はかなり少なく、Côte de Beaunenの半分以下です。生産量が少ない傾向がある赤ワインの産地であるため、白ワインの比率が高い他地域と比較下場合、生産量はさらに少なくなるはずです。
上の主要生産地を北から順番にならべると、生産状況は以下のようになります。
Commune name |
Area under production(ha) |
Those for Premier Cru(ha) |
Annual yield(hl) (Average of 2007-2011) |
Wine type |
Altitude(m) |
Aspect |
Gevrey-Chambertin |
402.72 |
80.52 |
16,832 |
Red |
280-380 |
East to south-east |
Morey-St-Denis |
106.61(red) 4.93(white) |
38.22(red) 1.23(white) |
3,432(red) 201(white) |
Red White |
220-270 |
East |
Chambolle-Musigny |
152.65 |
55.40 |
6,016 |
Red |
250-300 |
East |
Vougeot |
10.65(red) 3.66(white) |
8.10(red) 2.83(white) |
378(red) 166(white) |
Red White |
240-280 |
- |
Flagey-Échézeaux |
44.10 |
- |
1478 |
Red |
230-300 |
East |
Vosne-Romanée |
151.91 |
57.19 |
5,901 |
Red |
- |
East |
Nuits-St-Georges |
297.06(red) 9.78(white) |
136.32(red) 6.79(white) |
11,592(red) 392(white) |
Red White |
- |
East or South-East |
(Bourgogne-wine.comのデータから作成)
私個人的には、これらの通称では村名ワインと呼ばれるものでもその価格帯は他の生産国・地域のものと比較すると価格が高めかなと感じる事が多いです(品質どうこうの話は抜きにして、の話です)。また前回の際に確認した通り、ヴィンテージの影響が大きいため常に安定して凝縮感たっぷりのワインができるという産地ではありません。この背景にはこの地域で追及されているスタイルの問題もあります。そのため例えば販売価格が5千円台のCôte de Nuitsのワインを買ったとしても、とくに果実味の凝縮感という点で言えば新鋭のニューワールドの産地で作られた同価格帯のものより大人しいことが多いです。というのは、その価格帯ではこの土地のフラグシップと言えるプルミエ・クリュやグラン・クリュのワインは買えない可能性が大だからです。おそらくこのクラスであれば村名クラスか有名生産者のレジョナルレベルのワインになると思います。これらに使われるブドウは基本的にはCôte d’Orの丘の上かもしくは丘が隆起する手前の東側にある平地からできたものが多いです(例外はあります。逆にそういうものが狙い目です)。近年では地球温暖化のためか、丘の中腹から外れた地域でもブドウが適切に成熟できる産地ができている事は度々指摘されることが増えていますが、それでもやはりプルミエ・クリュやグラン・クリュの優位性を疑う声は意見は少ないかと思います。本当に私的な話ですが、ブルゴーニュのワインを飲む際はCôte de Nuitsに限らず、できればPremier Cru以上のブドウからできたワインを楽しみたいと思います。
【参照】
1.
Bourgogne and its five wine-producing regions. Bourgogne-wine.com. [online] Available at https://www.bourgogne-wines.com
Accessed on 2 August 2018.
2.
The Côte de Nuits, prestigious and varied appellations. Bourgogne-wine.com. [online] Available at https://www.bourgogne-wines.com
Accessed on 2 August 2018.
3
Passport to Burgogne wines. Bourgogne-wine.com. [online] Avaialble at https://www.bourgogne-wines.com
Accessed on 2 August 2018.
4.
Côte de Nuits. Jancisrobinson.com [online] Available at https://www.jancisrobinson.com
Accessed on 3 August 2018.
Jefford on Monday: Burgundy’s great question. Decacnter. [online] Available at https://www.decanter.com
Accessed on 3 August 2018.
6.
Key figures for the Bourgogne wine region. Bourgogne-wine.com. [online] Available at https://www.bourgogne-wines.com
Accessed on 7 August 2018.
Accessed on 7 August 2018.
Morey-St-Denis. Bourgogne-wine.com. [online] Available at https://www.bourgogne-wines.com
Accessed on 7 August 2018.
9.
Chambolle-Musigny. Bourgogne-wine.com. [online] Available at https://www.bourgogne-wines.com
Accessed on 7 August 2018.
10.
Vougeot. Bourgogne-wine.com. [online] Available at https://www.bourgogne-wines.com
Accessed on 7 August 2018.
11.
Vosne Romanée. Bourgogne-wine.com. [online] Available at https://www.bourgogne-wines.com
Accessed on 7 August 2018.
Flagey Échezeaux. Bourgogne-wine.com. [online] Available at https://www.bourgogne-wines.com
Accessed on 7 August 2018.
13.
Nuits-Saint-Georges. Bourgogne-wine.com. [online] Available at https://www.bourgogne-wines.com
Accessed on 7 August 2018.
14.
From Terroir to Climats AN IN-DEPTH LOOK. Bourgogne-wine.com. [online] Available at https://www.bourgogne-wines.com
Accessed on 8 August 2018.
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