2017年12月9日土曜日

スミレ(Violet)香りについて

ワインの表現を表現するために様々な花や果物の名前が用いられますが、それらの中には一般的な日本人にとってはあまり親しみがないものも少なくありません。

今回はスミレ(英:Violet)について書いてみます。

まず最初に、この香りが感じ難くても落ち込まないでください。というのもスミレの香りの原因物質の1つとされている物質は、嗅ぐ人によって感じ方が全く違うこと分かっているからです。ちなみにシラーやグリューナーフェルトリーナの個性である胡椒っぽさについては、そもそも香り自体を感じにくい人が一定数いるようです。

スミレの香りの原因物質のとされているのが、主にα-イオノンとβ-イオノンという物質です。イオノン はヨノンとも呼ばれるようです。面白いことに、製造方法によってはβ-イオノンは烏龍茶にも含まれる可能性があるようです。気になる方は参照1のサントリー食品インターナショナルの特許を参照してください。

参照2によるとワイン製造上の発生経路は「カロテノイドの酸化的分解」(後藤. 2013)とのことです。これが起こりやすい品種ではスミレの香りが生じやすいと考えられます。

本題のワインの香りについてです。参照3ではワインを表現する上でよく使われる花の名前としてスミレが挙げられています。α-イオノン が発生するワイン用ぶどうの品種として、ムールヴェドル、トゥーリガナショナル、プティヴェルド等があるとされています。
(正直な話、自分はこれらの品種にスミレっぽさを感じたことがあまりなく、ひょっとしてスミレの香りが取れない一人なのか?)

落ち込むことはなく、この成分に限ったことではないですが、香りの感じ方は人それぞれなのです。参照4によると特定の場所の遺伝子の差異によって少なくともβ-イオノン に対する知覚感度は変わってしまうのです、感じる人でも遺伝子の違いに応じて感じ方も変わります。良い香りだとする人もいれば、酢(!)みたいだとする人もいました。

長々と書いて何が言いたかったかと言いますと、当たり前ですが香りの感じ方も人それぞれで違って当然なのです。個人的にはこのことこそワインの香りを表現する上で一番重要な大前提だと考えています。

ワインの情報誌などでは色々な聞いたことも無いような名前の花・ハーブ・果物の名前が登場します。それがどんなものか知らなくても、落胆することはありません。そもそもそれらがどんなものか知っていたとして、同じワインを嗅いだとしても他人が感じた香りとあなたが感じる香りの印象が全く違うことがあり得るのです。だからといって何も知らなくって良いと言うわけではありませんが。

もしあなたがお友達と同じワインを楽しんでいる時に、お友達が全く違う香りの表現をされたとします。その際には一歩落ち着いて、この人はこういう感じ方をするんだなとか、そう感じる人もいるんだなというくらいに考えても良いかもしれません。
仮にそのお友達があなたにとっては好ましくない香りがするワインが好きであっても、「この人は変な香りのワインが好きなんだな。おなしなな人。」とは思わないでください。その人にとっては実際に素晴らしい香りがしているのかもしれませんから。


【参照】
1.
サントリー食品インターナショナル(株). 烏龍茶抽出物. 国際公開番号WO2011/126005. 2011.10.13.
2.
Goto.N.(2013). ワインの香り評価用語. におい・かおり環境学会誌. [online]. Available at:https://s3.amazonaws.com/[Accessed 26 Nov 2017]
3.
Puckette, M.(2013). 6 Common Flower Aromas in Wine. Wine Folly. [online]. Available at http://winefolly.com. [Accessed] 9 Dec 2017.
4. 
Sara, R.(2013). A Mendelian Trait for Olfactory Sensitivity Affects Odor Experience and Food Selection, Current Biology. [online] Available at http://www.cell.com/

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